2014.10.01カテゴリ|ブログ
こんにちは、わたなべ動物病院の渡辺です。
今回は子宮蓄膿症のお話です。
急に元気・食欲がなくなった4歳のチワワさんが先日来院されました。
生理が4週間ほど前に来ており、去勢したワンちゃんと交尾をしていたとのことでした。
聞いてみると水をよく飲む・おしっこを多量にする(多飲多尿)とのことでした。
これらのお話からは子宮蓄膿症が一番に疑われますが、陰部からの排膿は顕著にありません。
(多くの子宮蓄膿症は陰部から排膿が見られます。)
多飲多尿は様々な疾患が原因でなることがあり、(また、いつかブログで詳しく書こうと思います。要注意な症状です。)
原因を明らかにするには複合的に検査をする必要性があります。
今回の検査結果ではCRP(=炎症等で上昇するたんぱく質)20μg/ml以上(正常値1μg/ml未満)、エコーで子宮の顕著な拡張を認めました。
この結果から閉塞性(陰部から排膿のない)の子宮蓄膿症に起因する急激な状態悪化と考えられました。
子宮蓄膿症の手術による死亡率は5~10%程度と言われていますが、(無治療だとほぼ100%亡くなります。。)
閉塞性の子宮蓄膿症は子宮蓄膿症の中でも最も危険な状態です。
そのため、その晩に緊急手術を行いました。
開腹すると一部子宮が裂け、少量の膿がお腹の中に漏れていました。子宮破裂による腹膜炎も併発している状況です。
子宮蓄膿症でなくなる理由の50%以上が腹膜炎に起因します。
危険な状態です。すぐに卵巣・子宮の全摘出を行い、お腹の中を洗浄しました。
幸い、手術中も血圧など全身状態は一定しており、手術を乗り越えてくれました。
菌の培養検査、抗生物質(菌を退治する薬)に対する感受性検査(どの薬が効くかどうかをみる検査)も行いました。
抗生剤も効果のあるものを選択できており、術後の管理も良好で、無事に抜糸を行うこともできました。
手術をせずに様子を次の日まで見ていたら、手遅れになっていたかもしれません。
膿がお腹の中に漏れていたため、しばらくは抗生剤を投与しないといけませんが、頑張ってくれそうです。
手術はリスクがあるため、執刀前後は常に緊張しますが、元気になってくれて本当によかったなと思います。
死亡率の高い子宮蓄膿症を避けるためにも、早期の避妊手術をこれからも推奨していこうと思います。
そのような意味でも、次回は避妊していない♀のワンちゃんがこれだけ怖い子宮蓄膿症になってしまう可能性についてブログに載せようと思います。
文責 渡辺 高司