2014.09.16カテゴリ|ブログ
こんにちは、わたなべ動物病院の渡辺です。
今回のブログは犬の甲状腺機能低下症についてです。
ワクチン接種で来院されたイタリアン・グレーハウンドのワンちゃん。
話をよく聞くと最近になって体重が増えるようになってきたとのことでした。
弊院が開院する前に他の病院さんで、高コレステロール血症、軽度の貧血と言われていたようです。
この段階で少し怪しい状況です。
さらに身体検査をすると心拍数が少なく(徐脈)、しっぼに特徴的な脱毛所見(ラットテイル)、左右対称の脱毛が認められました。
これはかなり甲状腺疾患が疑わしい。そこで甲状腺ホルモンの値をしっかりと測定しました。
甲状腺ホルモン(※解説1)T4、f-T4ともに検出限界以下(測定できない位低く)、
甲状腺刺激ホルモン(TSH)2.82ng/ml(基準値0.08~0.32)と高値を示しました。
これらの症状およびホルモン検査の結果(※解説2)から甲状腺機能低下症と診断しました。
現在、甲状腺ホルモン製剤を内服して3週間ですが、12.1㎏あった体重が11kgまで減少しました。年のせいでおとなしくなっていたと思っていたワンちゃんが以前より元気に遊んでいると飼い主様も喜んでおられました。皮膚も少しずつ改善していくと思われます。
年のせいでおとなしくなったかな?少し太ってきたかな?というよくある状態も実は病気が原因のこともあります。
年のせいかなと思った時でも改善できるものもありますので、気になる症状がありましたら、なんでもご相談下さい。
文責 わたなべ動物病院院長 渡辺 高司
(※1)甲状腺ホルモン・・・甲状腺が作るホルモン(血流に乗って、対象臓器に命令を出す物質)で、様々な臓器に作用し、大まかに言うと、代謝を活性化させるもの。不足すると代謝の低下から、太りやすくなる、高コレステロール血症、皮膚症状、貧血、徐脈など様々な症状を示します。
TSH・・・・・・・・甲状腺刺激ホルモン。脳下垂体が作るホルモンで、その名の通り、甲状腺に作用して、甲状腺ホルモンを作らせるもの。
(※2)甲状腺機能低下症では血中甲状腺ホルモン濃度が低下します。特に、甲状腺そのものが悪くなった場合、甲状腺ホルモンが作れず、低下します。甲状腺ホルモンの低下を感知した脳下垂体は甲状腺を刺激するためにTSHを増やします。しかし、甲状腺は反応できないため、甲状腺ホルモンは増加しません。